ゴッホを生み出したオランダ その12

オランダの画家ゆかりの町

どこまでも続くチューリップ畑、地平線を背にして立ち並ぶ風車、そして干拓地の中を縦横に走る運河…。
そんなのどかな光景が広がる愛らしい国オランダ。

この国に生まれた感受性の豊かな画家たちは、好んで愛する故郷の景色や美しい自然を描いた。
アムステルダムの運河に架かるマヘレのはね橋は、ゴッホがのちに南仏アルルで描く『アルルのはね橋』の原点になり、区画された広大なチューリップ畑は、モンドリアンの幾何学的な抽象絵画を生み出す下地ともなった。

ゴッホを生み出したオランダ その11

さらに時間に余裕があるなら3階のデッサンをぜひ見たい。
鉛筆やクレヨンでしっかりと描き込んだ農夫の横顔や裸婦、リズミカルに走るペンで描いた花のスケッチなどが、時代順とテーマ別に展示され、ゴッホの絵に傾けた情熱がストレートに伝わってくる。

さらにもう1階上へ上がると、ロートレックやゴーギャンのとらえたゴッホの肖像画をはじめ、ベルナールの代表作、マネのデッサンなどがゴッホの作品の背景を物語っている。石塚孝一氏によると、最後に1階へもどり、図書室をのぞいてみよう。
ゴッホの書簡集やマイクロフィルムになった手紙が作品をより深く理解させてくれる。

ゴッホを生み出したオランダ その10

その他にも数多く名作が展示されており、代表作では『夕陽と種まく人』や『アルルのみえる花咲く果樹園』には、そうしたゴッホの東洋思想への麿憬が反映されているようだ。
そんな幸福な時代から一変して、これ以降の画風は、激しい情念に貫かれている。

燃え上がるように波打つ糸杉と麦畑は、サン・レミとオーヴェル時代の象徴。
炎の人の終章を飾る2点の作品、『荒れもようの空の麦畑』『烏の群れ飛ぶ麦畑』からは、胸に突き刺さるような赤裸々な叫びが聞こえる。

ゴッホを生み出したオランダ その9

T字型に突き出たコーナーには、この時代を象徴する『ひまわり』『ゴーギャンの椅子』『ヴィンセントの家』が並んでいる。

ゴーギャンとの"芸術家の共同生活"に夢ふくらませ、アトリエを飾るために描いたひまわりや、共同生活のために借りた黄色い家には、明るい光や愛を表現する黄色の色彩があふれ、南仏の自然の中で充実した時間をすごすゴッホの姿が目に浮かぶようだ。

この時代のいとおゴッホの書簡には、「四季の移ろいを愛しみ自らも花のように自然に生きる」日本人観が綴られている。

ゴッホを生み出したオランダ その8

ここから右手に回ると、パリ時代の作品スペース。
ぱっと目の前が開けたように明るい色が氾濫して、新しい技法や色彩にめざめていくゴッホの感動が伝わってくる。
『灰色のフェルト帽をかぶった自画像』は、光が踊るようなリズミカルなタッチで描かれ、印象派の画家たちとの交流を物語っている。

また『梅の花』『おいらん』など広重や英泉の浮世絵模写には、ゴッホと日本画のつながりを見ることができる。
パリ時代に続く壁面を飾るのは『アルジェリア兵』『ヴィンセントの寝室』など、色彩鮮やかなアルル時代の作品。

ゴッホを生み出したオランダ その7

階段を上がったところがオランダ時代の作品。
伝道師を志していたゴッホの初期の絵は、ひたすら神の道を模索するかのような重苦しい情熱に貫かれている。
この時代の代表作といわれるのは、『馬鈴薯を食べる人びと』。

何点もの習作を重ねて完成されたもので、ランプの下で食事する農民が描かれている。
その暗い画面から伝わってくるのは、土を耕して生きる人たちの現実生活の重み。
農民の絵はきれいごとであってはならないという、当時のゴッホの信念が感じられる。

ゴッホを生み出したオランダ その6

ゴッホ美術館を1時間で堪能する。

中央がガラス張りの吹き抜けになった館内には、柔らかな自然光が差し込んでいる。
装飾を排したシンプルな空間が静寂をたたえて、炎の画家ゴッホとの対話への期待をふくらませる。

それほど大きな建物ではないので、早足なら1時間で全館をめぐることも可能だが、ここに収められている作品群はゴッホの哲学であり、入生そのもの。
各時代の代表作をじっくり鑑賞しながら、効率よく回りたい。
入館したら1階ホールからまず2階へ直行しよう。

ゴッホを生み出したオランダ その5

その尽力は並大抵のものではなかった。
手紙の整理は困難が多い仕事だ。
しかし何よりも彼女は出版のタイミングを辛抱強く待った。
というのも絵の評価が与えられる前に、ゴッホの人格に関心が集まることを恐れたからだ。

愛情と知性をもった彼女の仕事はテオとヨノ・ンナの息子V.W.ヴァン・ゴッホに引き継がれ、1931年からはアムステルダム市立美術館で常設展示されることになった。
こうしてゴッホ美術館が開館され、作品はここに集められたのである。

ゴッホを生み出したオランダ その4

弟テオと、その妻の献身で誕生した美術館独自の画風を確立してからわずか3年、画家を志してから数えても10年。
37歳で自らの生に終止符を打ったゴッホの、画家としての活動はきわめて短い。
このゴッホを経済的、精神的に支えてきたのが弟テオ。

ゴッホは作品の構想を逐一手紙でテオに報告し、デッサン、作品を彼のもとに送り続けた。
テオの死後、652通にものぼった手紙の束を3巻の書簡集にまとめたのは、テオの妻ヨハンナだった。
24年の歳月をかけてこの書簡集を刊行するまでの間、ヨハンナはテオの所蔵したゴッホの作品を世間に認めさせる活動に献身。

ゴッホを生み出したオランダ その3

ここには初期オランダ時代からパリ時代、アルル時代、そしてサン・レミ、オーヴェル時代とゴッホの各時代の作品が網羅されており、画風の移り変わりとともにゴッホの炎の旅路をたどることができる。建物は地下1階、地上4階建て。

ゴッホの主な油絵の作品は2階にあり、3階には鉛筆や黒クレヨン、ペン描きによる素描と、ゴッホと弟テオが集めた浮世絵のコレクション・4階にはゴッホと同時代を生きたゴーギャンやロートレックの作品が展示されている。

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